行動のメカニズムを解明した心理学「選択理論」
「思い通りに動かない部下に対してついつい怒鳴ってしまい、関係がギスギスしている」「意見の違いから上司との関係がうまくいっていない」。これら人間関係の問題は、どの国のどの組織においても共通しているものと言えるでしょう。日本では、離職の理由の第1位に職場の人間関係があがってくるほどだとも聞いています。
人間関係は職場に限らず、日常のあらゆるシーンで問題となるものではありますが、特に職場の人間関係は仕事に直結しているだけに、チーム全体で成果に向かえる良好な人間関係が重要になってくるのです。
さて、選択理論がより高い成果を生み出す職場の人間関係づくりにいかに役立つのかについて説明するためにも、まずは選択理論について簡単にご紹介したいと思います。
選択理論とは、一言で言うと「人間はどのように行動選択するのか」という脳のメカニズムを研究した心理学になります。ここではそのうちの2つの概念、“基本的欲求”と“上質世界”についてご紹介します。
基本的欲求と上質世界
基本的欲求
選択理論の中では 「人は生まれながらにして5つの基本的欲求を持っている」と説明されます。
この5つの欲求は誰もが持ち、人の行動はその欲求を満たそうと動機づけられます。
例えば、お腹が空いた時に「なにか食べたい」と思うのは5つの欲求のうち“生存の欲求”が機能しているからで、仕事で成果を残し認められたいと思うのは“力の欲求”が機能しているから、と考えられます。
上質世界
そして、この5つの基本的欲求を満たすと考えられる人や物や状況などが“イメージ写真”として入っている記憶の世界のことを、“上質世界(Quality World)”と呼びます。人はこの上質世界にあるイメージ写真を現実世界で手に入れようと動機づけされて行動します。
さきほどのお腹が空いた時の例で言えば、「駅前の有名店のオムライス」が上質世界に入っていると、そのお店に向かい、オムライスを注文する、というわけです。
そして、この5つの基本的欲求を満たすと考えられる人や物や状況などが“イメージ写真”として入っている記憶の世界のことを、“上質世界(Quality World)”と呼びます。人はこの上質世界にあるイメージ写真を現実世界で手に入れようと動機づけされて行動します。さきほどのお腹が空いた時の例で言えば、「駅前の有名店のオムライス」が上質世界に入っていると、そのお店に向かい、オムライスを注文する、というわけです。
このように、同じチームに所属していたとしても、求める状況・選択する行動には違いが生じるのです。 人間関係を考える時に、この「バランスの違い」と「満たし方の違い」を意識することは非常に大切です。 『人はみな違い、人はその時々自分の欲求を満たそうと最善の行動を選択している』。これは選択理論の基本となる考え方のひとつですが、周りから見たら効果的とは思えない行動だとしても、本人にとっては最善の行動なのです。
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