奇跡の学校 Rochester School 訪問記④
Living Textbook(生きた教材)から、生徒たちが学ぶこと
Rochester Schoolは約10年前から自然環境に配慮した取り組みをしています。
校内での植物の栽培や、ゴミの分別から始まり、下水処理場による水の再利用、太陽光発電による節電など、様々な方法で自然環境保護に取り組んでいるのです。
その目的は環境保護ももちろんですが、一番は生徒たちの「人格教育」をすることにあるそうです。
Rochester Schoolでは、学校の建物や環境のことを「Living Textbook(生きた教材)」と表現しています。学校の建物や環境そのものが、すべて教材になるということです。
校内で様々なものに触れてもらうことを通して、「なぜ建物がこの構造になっているのか」「太陽光パネルでどれくらいの電気を補っているのか」「下水処理でどれくらいの水を節約しているのか」といったことを学び、自然や環境に対する感性を小さい頃から磨くことを目指しているそうです。
※学校全体で自然環境保護に力を入れている
植物の有機栽培を通して、人や環境に対して「思いやる」心の習慣を身につける
Rochester Schoolの校内では沢山の植物が育てられていますが、この植物は生徒が自分たちで育てています。また、ただ栽培するだけではなく、自分たちで分別した生ゴミを肥料として再利用して有機栽培をしています。
毎朝、登校して最初に植物の手入れを行い、自ら有機栽培に関わることで、自然環境への配慮の大切さを体で学んでいくのです。
そして、この植物の前には、ある7つの言葉が書かれた立て板が設置されています。それは「7つの身につけたい習慣」という選択理論心理学の言葉です。「7つの身につけたい習慣」とは、人間関係を良好にするために身につけると良いとされる習慣のことで、具体的には「支援する」「励ます」「傾聴する」「尊敬する」「信頼する」「受容する」「意見の違いを交渉する」という7つの行動を指します。
これらの立て板が校内の至るところに存在することで、生徒は常に「身につけたい7つの習慣」を意識します。さらに、それぞれの言葉の意味に対応した植物が植えられていることで、7つの行動に対する理解も深まるように設計されています。たとえば「意見の違いを交渉する」の立て板の後ろには、様々な種類の木が植えられており、そこには「植物は互いに共存するためには、互いの違いについて交渉し合う必要があります。色も形も大きさも違うけれど、共に存在することでより長く、より良く育つのです」と書かれています。
生徒は植物の手入れをしながら、7つの良い習慣への理解と意識が深まっていくのです。
ごみのリサイクル活動や下水処理の施設について
Rochester Schoolの自然環境への配慮を最も象徴しているのは、徹底したごみのリサイクル活動と下水処理の施設です。
Rochester Schoolに使い捨てのものはほとんど存在しません。スプーンやフォーク、コップやマドラーなどの生活用品は使い捨てのものを使用せず、校内には自動販売機ではなくウォーターサーバーを設置しています。更に、ごみはOrganic(有機物)とNonorganic(無機物)で常に分別しています。Organic(有機物)として分類されたごみは、校内のごみ処理場に集められ、再度使用できるように時間をかけてバクテリアで分解をして土や肥料にしていきます。その土や肥料を用いて、生徒たちは校内の植物を育てる活動をするのです。
また、校内に大規模な下水処理施設も存在します。生徒たちが使用した様々な生活用水は、この下水処理場で浄化されて、再度使用できるようになっています。驚くべきことに、このリサイクルによって、Rochester Schoolだけでなく周辺地域も含めた全体の水の使用量を30%節約することに成功しているそうです!
他にも校舎の屋上には太陽光パネルが設置されており、なんとプールで使用する電力はほぼ全て太陽光パネルで発電している電気で補っているそうです!
私たちの「選択」が世界平和に繋がる
これらの環境保護活動を通して、Rochester Schoolが生徒たちに最も教えたいことは何か?
それは、自分たちの「選択」がいかに周囲の環境に影響を与えているかということです。
Rochester Schoolの経営者であるJuan Pablo Aljure氏は「地球を一つのシステムと捉えた時に、私たち人間の行動がどれくらいそのシステムに影響を与えているのかを知る必要がある」と言っています。自然環境保護の活動を通して、生徒に日常の自分たちの行動がいかに周囲の環境や地球そのものに影響を与えているかということ、だからこそ自分たちの「選択」が地球を守ることや世界平和に繋がるということを教えているのです。
この背景にも、やはり選択理論心理学の考え方があります。選択理論心理学の「責任の概念」です。責任の概念とは「他の人々の欲求充足を妨げることなく、自分自身の欲求を満たすことが、本人の責任である」という考え方です。Rochester Schoolが目指しているのは、この責任の概念を全ての人が持てるようになり、今世の中に存在する争いや環境問題を無くしていくことなのです。
いかがでしたでしょうか?
これまでRochester Schoolのレポートを通して、選択理論心理学を教育に適用する事例を沢山ご紹介してきました。
今回のクオリティスクール視察で最も大きな収穫は、選択理論心理学が「人間関係を良くすること」に役立つだけではないということが分かったことだと思います。
たとえば、選択理論心理学は、生徒の主体性を育むことにも役立つことが分かりました。また、学校を好きになってもらうことにも役立ちます。今回のレポートの通り、問題に対する当事者意識を持ってもらうことにも役立つことも分かりました。
そして、これらの選択理論心理学の効用は、学校教育だけではなく、多くの場面で応用をすることができるのではないでしょうか?
家庭、学校、職場、地域社会。どこにおいても「人間関係を良くすること」「主体性を育むこと」「何かを好きになってもらうこと」「問題に対する当事者意識を持ってもらうこと」は重要です。そう考えると、今回のRochester School訪問は「選択理論心理学の可能性」に触れた旅だったと言えそうです。
ぜひ皆様にも、本レポートを通して感じていただいた選択理論心理学の可能性を、様々な場面で活かしていただければと思います。
- ディスコネクテッド
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グラッサー博士は、温かい人間関係がない状態をディスコネクティッド(disconnected)と表現している。